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……いた。確かにいた。
俺の目の前の方のフェンスの上に
ちょうど月明かりに照らされながら、
腰まで伸びた長い黒髪をなびかせながら
器用に座っていたのだ。
体格からして、女か?
とりあえず、間に合った事に少しだけ安心し、
息をつこうとしたその時。
風が急に強くなり、
閉まりかけていたドアが、
風によって大きな音を立てながら
乱暴にしまった。
その音の直後、
その音に反応したソイツは
「誰!!」と大声を上げ、こちらに目を向けた。
そして、もう一度俺に対して
警戒心を撒き散らしながらこういった。
「誰?誰なの?
アタシを連れ戻しに来た野郎か何か?」
その女は、風になびく髪を手で押さえながら
体をこちらに向けた。
若干よく分からない事を言った様な気もするが、
聞かれているのなら答えるのが当然だろうと思い
まだ、完全には落ち着いていない
呼吸を整えいった。
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