月の晩に

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 死神がそう言い終えた頃、月を隠していた雲がまた風で流されてその姿を完全に現しました。  すると黒猫がいたところには、また元の耳と尻尾の生えた人の姿があるのでした。 「黒猫よ。明日の朝一番に自らの目についた薔薇の花ビラを一枚そのままお食べ。そうすればお前さんは一日尻尾も耳もない人間でいられるから」  耳と尻尾のある人間になった黒猫はただうなずいて「ありがとうございます。ご主人様」と言いました。  そんな黒猫に背を向けたまま何も言わずに死神はどこか遠くへ飛び去っていくのでした。
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