月の晩に

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 黒猫が慌てながら答えるうちに風が吹き、近くの桜の木から花びらが風に踊らされて、二人の方へと来た時に満月が雲で隠れてしまいました。  そのせいなのか、黒猫の姿は月が雲で隠れたとともに消え、そこには真っ黒な本物の猫が座っているだけなのでした。 「ただ…………」    けれどそのことにさして驚いた様子をどちらも見せず、黒猫は黒猫の姿のまま喋り続けようとしたのですが途中で口ごもってしまいました。  その様子を見た死神は少し困った顔をしてその先の言葉を当ててみせます。 「ただ……お前はあの人間を気に入ったのだろう?」
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