0.‡プロローグ‡

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     /0 ―――深夜。 暗闇の世界にぽぅと浮かび上がる、青白く輝く満点の月。 月の柔らかい光が、寝静まった街に優しく降り注いでいた。 季節的にまだ少し肌寒い夜風だけれど、個人的には夜の散歩にうってつけだと思う。 そんな、静かな夜だった。 …少なくとも、客観的に見たらそうなのだろう。 ただしそれも、この場面を見た奴なら誰しもが、“静かな夜”だ何て言えなくなるんだろうな、きっと。 現実離れした世界。 けれどもオレには、この現実離れした世界が現実で。 こんな醜い自分が生きている、裏の世界だから。 「…くそっ」 改めて自分の姿を確認した際、思わず眉が寄った。 場所は、嗅ぎなれた血生臭い異臭が立ち込めた一室。 家具や壁等に飛び散った血液が、無駄に豪華な部屋に紅を飾っている。 問題なのが、飛び散った血がオレのお気に入りのブーツにも飾られてしまっている事だ。 当然の事ながら、それはオレの血ではない。 何処も痛くないし、第一こんな程度の相手に傷を負う様なヘマはしないからだ。  
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