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「私に?」
すると彩月は胸に飾った花を指差した。
「この花…あの時のブーケなんですよ?
ドライフラワーにして大切に持っていたんです。
この日のために…」
「そう言ってもらえると嬉しいわ…。私も彩月さんに渡した甲斐があったって事ね…。
ちゃんと梅ちゃんに幸せにしてもらいなさいよ?」
「はい!」
しばらくすると式の開始を告げる場内アナウンスが流れた。
「彰さん来とらんのに!もう始まっちゃうじゃない!」
「ここで待ってても仕方ないわ…。式場に向かいましょ?」
『大丈夫。アニキには俺達が制裁を加えてやるから』
そして一同は式場へと向かうと、係りの者が扉を開け一同を場内に招き入れる。
まだ誰も集まっていないはずの場内に一人の男が立っていた。
真っ白なタキシードを着たその男は、壁に立て掛けられている大きな十字架に祈りを捧げているため、こちらに背を向けている。
「彰さん!!」
彩月が大きな声で呼び掛けると、男は振り返りニコッと笑って見せた。
「さっちゃん…」
梅澤は照れくさそうな顔で、ゆっくりと彩月や龍介達のところへ歩み寄ってきた。
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