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毎日のように一人で飲む事の多かった彩月は、誰かと話ながら飲む事が楽しかった。
その相手は同世代の異性…
そして地元の人間ではない…
という新鮮さと楽しさが、彩月のジョッキの数を増やす。
一方、仁はと言うと彩月の質問や世間話に返事を返すだけで、マイペースで飲んでいた。
「仁さん、彼女はおると?」
『………』
「ねぇ?」
『………。
居ると言えば居る…
居ないと言えば居ない…ですかね』
「何それ?」
『……遠距離…なんです』
「遠距離か…寂しくないと?」
『寂しいですけど…もう慣れました』
「慣れたと?それはそれで寂しくない?」
『まぁ…そうですね』
「奪っちゃおうかな…」
『えっ!?』
一つ空いた席を埋め、彩月は仁の腕にしがみつき顔を覗きこむ。
彩月の仁を見る目がさっきとは明らかに違う。ウルウルとした切なさそうな瞳で見つめてくる。
「仁さん…」
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