569人が本棚に入れています
本棚に追加
しばらくすると、ベリーピンクのパジャマに身を包んだ彩月が、隣の部屋から戻ってきた。
「クス‥仁さん可愛い」
ぬいぐるみの頭を撫でている仁の姿を見て、彩月が思わず言った言葉だった。
『ふざけないでください…。
こんなに大きな熊が居れば、私が居なくても寂しくないんじゃないですか?』
「人と人形は違う…
温もりが欲しい時もあるとよ?」
『私は抱きませんよ?』
「もう!分かってるっち!」
そして彩月が布団に入ると、仁は枕元の近くに座り、彩月の手を優しく握った。
「ありがとう…仁さん」
酔っていたせいか、安心したのか、彩月はすぐに眠りについた。
『………』
仁は彩月の穏やかな寝顔を、何かを思い出すかのような眼差しで見ていた。
そして左手で眠っている彩月の顔をそっと撫でる。
左手が彩月の唇に触れた時だった、仁の顔つきが悲し気な表情に変わった。
『………』
握っていた右手に力が入る。
そして‥
仁の頬にひとすじの涙が零れた。
最初のコメントを投稿しよう!