興味を持つ者

13/13
前へ
/358ページ
次へ
しばらくすると、ベリーピンクのパジャマに身を包んだ彩月が、隣の部屋から戻ってきた。 「クス‥仁さん可愛い」 ぬいぐるみの頭を撫でている仁の姿を見て、彩月が思わず言った言葉だった。 『ふざけないでください…。 こんなに大きな熊が居れば、私が居なくても寂しくないんじゃないですか?』 「人と人形は違う… 温もりが欲しい時もあるとよ?」 『私は抱きませんよ?』 「もう!分かってるっち!」 そして彩月が布団に入ると、仁は枕元の近くに座り、彩月の手を優しく握った。 「ありがとう…仁さん」 酔っていたせいか、安心したのか、彩月はすぐに眠りについた。 『………』 仁は彩月の穏やかな寝顔を、何かを思い出すかのような眼差しで見ていた。 そして左手で眠っている彩月の顔をそっと撫でる。 左手が彩月の唇に触れた時だった、仁の顔つきが悲し気な表情に変わった。 『………』 握っていた右手に力が入る。 そして‥ 仁の頬にひとすじの涙が零れた。
/358ページ

最初のコメントを投稿しよう!

569人が本棚に入れています
本棚に追加