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~一年後~
「パパ~?準備できたの?」
家の外まで響くような大きな声をあげているのは瑠璃子。
『後はネクタイするだけだから、そんなに急がすなよ』
「もう!早くしてよね!遅刻しちゃうじゃない!」
急かす瑠璃子に龍介のいい加減な言い訳が始まる。
『大丈夫だよ。
俺達より絶対に遅れるヤツを俺は知ってる』
「誰の事を言ってるの?」
『正義の味方はいつも遅れて登場するだろ?』
「呆れた…。
主役が遅れるワケ無いでしょ?
バカ言ってないで早くして!」
『俺ばっかり言われてますが…、瑠璃子は準備できてるのかよ?』
「私はパパより早く起きて、朝ごはんや洗濯をしなくちゃいけないのよ?支度なんて終わってるに決まってるでしょ!」
『はいはい…。
ったく、あの言い方…、子供を産むと女は変わるんだな…』
ネクタイの結び目をチェックしながら龍介が小言を言う。しかし瑠璃子も聞き逃しはしていなかった。
「もう!ブツブツうるさい!
詩織のオムツを替えたら出発するわよ?」
『分かったよ!それより上着は?』
「さっき言ったじゃない!
そこに掛かってるでしょ!?」
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