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『もう着替え終わったんだから、そんな怒るなよ』
「パパが遅いからじゃない!」
『そんな大きな声で怒るなって…。詩織がビックリするだろ?泣き出したらどうするんだよ』
「ほら!早くして!」
『はいはい…んじゃ行くか!』
目的地に向かう車内でも瑠璃子の愚痴が龍介の耳を責める。
が、龍介はいつものように『ハイハイ』と答えて聞き流していた。
もし龍介が言い返そうモノなら、瑠璃子は倍にして返してくる。
龍介は最終的に自分が言い負ける事を知っていたので、口答えせずに黙って聞いていた。
そういう面では一年前より大人になった龍介だった。
目的地に着いた龍介達を出迎えてくれたのは、電動車椅子に乗った熊津だった。
「おはよう、マー君」
「おはようございます…瑠璃子さん」
『マー君、おはよう。
すっげぇ~久しぶりだよね?』
「そうだなぁ…。
龍介は相変わらず元気そうだな?」
『うん、俺は相変わらずだよ。
それより…何だよ?そのヒゲ!ぜんぜん似合ってねぇよ!』
話し込んでいる龍介に瑠璃子が声を掛ける。
「ちょっと龍介!話してないで乳母車を降ろしてよ!」
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