酔恋

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立てるか、とでも言いたげに 座りっぱなしのアタシの目の前に片手が差し伸べられる。 その無駄のない動き。 男の人特有の、大きくて細いけど、角ばったな手。 長い手足。 その存在すべてに目を奪われた。 「あれ?また固まっちゃった…」 再び動かなくなったアタシを見て、またクスリと笑みをこぼした。 細められた瞳から目が離せない。 パタリ  パタリ 間が悪いのか、良いのか 再び、空が泣き出した。 「ほら。また降ってきた」 空を仰いで、差し出したままになっていたその手が アタシの腕をつかんだ。 「え、え?」 立つように促される。 「ほら。行こう?僕まで濡れちゃうし」 この美形さんを雨でびしょ濡れにするわけには行かない。 美形さんに風邪をひかすわけにはいかない。 変な使命感に駆られて 重い体を、引きずるように持ち上げ、ずるずると足を動かせた。 .
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