759人が本棚に入れています
本棚に追加
立てるか、とでも言いたげに
座りっぱなしのアタシの目の前に片手が差し伸べられる。
その無駄のない動き。
男の人特有の、大きくて細いけど、角ばったな手。
長い手足。
その存在すべてに目を奪われた。
「あれ?また固まっちゃった…」
再び動かなくなったアタシを見て、またクスリと笑みをこぼした。
細められた瞳から目が離せない。
パタリ
パタリ
間が悪いのか、良いのか
再び、空が泣き出した。
「ほら。また降ってきた」
空を仰いで、差し出したままになっていたその手が
アタシの腕をつかんだ。
「え、え?」
立つように促される。
「ほら。行こう?僕まで濡れちゃうし」
この美形さんを雨でびしょ濡れにするわけには行かない。
美形さんに風邪をひかすわけにはいかない。
変な使命感に駆られて
重い体を、引きずるように持ち上げ、ずるずると足を動かせた。
.
最初のコメントを投稿しよう!