失恋

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ガタンガタンと、電車が遠ざかっていく音が聞こえる。 どのくらい、屋根も雨よけの木もないベンチに座っていたのだろうか。 雨はもう、振っていなかった。 制服が雨を含んで重くなっている。髪も、頬や額に張り付いて離れない。 何時間か前のことを思い出すとにじむ涙が、ツタツタと色濃くなった制服へ数滴おちた。 どんよりと重たい雲が、自分にのしかかっているようで動く気がしない。 『オレ、遠距離ってダメなんだよね』 人がすれ違う廊下で、彼が突然口を開いた。 .
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