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霧科志奈の姿が見えなくなった瞬間、霧科はその場に倒れた。
「霧科!」
「大丈夫だ」
そう言い、霧科は壁に手をついてフラフラと危なっかしく立ち上がった。
「大丈夫じゃねぇだろ」
多少気恥ずかしいが、霧科に手を差し出した。
「手ぇ貸すぜ」
霧科はいつもの冷たい目をオレに向け、無言で手を取った。
「よっしゃ。じゃ行くぞ」
「……すまない」
小さな声で霧科は言った。
「なーに言ってんだよ」
ゆっくりと足を動かしながら、キザっぽく言ってみる。
「お互い様だっての」
それから霧科は一言も言葉を発しなかった。
それにしても、色々と知りすぎた気がする。
志摩と霧科の話。
特に、志摩には話しておかないといけないと思う。
正直、話して何になるのかサッパリわからねぇけど。
霧科は、こればっかりはさすがにどうすればいいのか検討もつかねぇ。
第一、そういうこと話したがらないみたいだし。
まぁ、人の生き死にについて話したがるやつなんていねぇだろ。
自分の意思ではないとはいえ、殺人ともなればなおさらだ。
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