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落とした刀を回収し、来た道を戻る。
話題が見つからず、気まずい沈黙が流れるが、まぁ霧科っていつもこんな感じだよな、うん。
喋る時は意外と喋るし。
「あの…さ、霧科」
こういう沈黙はどうしても苦手なオレ。
「……なんだ?」
「さっきの……霧科志奈…だっけ?」
「聞いたのか? オレのことを」
「……あぁ」
霧科はうつむき、その場で足を止めた。
自然に肩を貸しているオレの足も止まる。
「どう思った?」
「なにがだよ?」
「この体は、血で汚れてしまっている。体だけではなく、オレ自身の血もきれいなものじゃない。そんな穢れたオレと関わって……」
「また関わるなとか言うんじゃねぇだろうな?」
霧科はうつむいていた顔を上げ切れ長の目をオレに向ける。
「お前は穢れてなんかいねぇよ」
オレは霧科を引き摺るようにしてまた足を動かし始めた。
「お前がどう思ってるかは知らないけどな、オレたちはそうは思っちゃいない。
でないと誰も心配しねぇよ」
霧科からの言葉は何もなかった。
それ以上何か言うのは臭い気がしたから何も言わずにエレベーターまで歩いた。
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