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エレベーターはオレが乗ってきた時から動いていないようで、まだこの階にあった。
さっきの霧科志奈って奴はまだこの階にいるってことだろう。
エレベーターに乗り込み、地上へのボタンを押そうとした時、オレの指は止まった。
この状況の中で、最悪な言葉が聞こえたからだ。
「エレベーター動かしたら、壊しちゃうよ?」
子供のような明るい声だった。
「誰だ!?」
「それボクのセリフだよね?
ボクの研究施設に勝手に入り込んで、コソコソしてる君たちこそ誰なのさ?」
オレは一端エレベーターから降り、その声の主を確認した。
見た目はまるっきり子供だ。
小学生くらいの身長に対して、明らかにサイズが合っていない白衣を着て、そのポケットに両手を突っ込んでいる。
「ボクは八桐和人(はちきりかずと)。志摩の研究施設の責任者ってところかな」
「お前みたいな子供が?」
たぶん、今のオレの顔はそうとう胡散臭そうな感じだったと思う。
「やだなぁ。子供が大人に劣るなんて誰が決めたのさ?」
八桐和人は笑いながらそう言い、さらに歩いて近づいてくる。
「ったくもう、シナさんがやられるなんて考えもしなかったよ」
ぶつぶつと悪態をつきながら八桐は立ち止まった。
オレとの距離はたぶん五メートルくらいだ。
八桐の白衣の袖から、突然蛇が飛び出し、大口を開けて襲いかかってきた。
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