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……ここにきて困ったことが起きた。
まぁ、傷一つつかないんだろうし本人は痛くも痒くもないのかもしれない。
だがしかし、十歳の小学生を刀で刺すって人としてどうよ?
残念ながらオレはそんな外道ではないと思う。多分。
「ねぇ、早くしてよ」
そんなオレの葛藤を知りもしないこいつはそんなことを言う。
「確認だけどさ、お前が痛いとか、ないよな?」
「アハハハ、ないよ。ボクの腕の陣とデュポーンは繋がっているんだから、それを通すだけなんだよ。これは厳密に言うと召喚陣じゃなくてどちらかと言うと空間転移でね、害をなす魔法じゃないから君が意識しない限り天使の歌では消えないと思う。これはボクが作り上げた新しい魔法でね……」
「論点ずれてきてるけど、とにかく大丈夫なんだな?」
「うん」
「じゃあ行くぞ」
ちょっと怖いが仕方ない。
刀を刺しやすいように逆手で持ち、ゆっくりと八桐の腕に近づけていく。
刀は吸い込まれるように八桐の腕の中に音もなく刺さっていく。
ある程度刺していくとそれ以上刀が進まなくなった。
たぶんこれがデュポーンだ。
さらに力を込めると、刀が何かに突き刺さるのを感じ、そこで一気に天使の歌を流し込んだ。
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