桜狩り倶楽部

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   とてつもなく簡単に仕事内容を伝え、わからないことはそのつど教える、と大雑把な説明を付ける。  松本さんは何度か瞬きをしていたが、「はい」と素直に頷いた。 「──じゃあ」  俺はレジを開けながら、言った。 「今は客もいませんし、レジの使い方を教えます」 「あ、はい」  松本さんは、やはり目をパチパチさせた。  他の職種に就いたことがないので、他の職場のことはわからないが、コンビニやスーパーでは普通、事前に裏でレジの使い方などの練習を受ける。  だが、ここではそんなことをしない。正直なところ、ぶっつけ本番と言ってもいいくらいだ。歴代のほとんどの店員が、やりながら覚えていく、というスタイルをとる。いや、とらされる。俺もその一人だ。  都心のチェーン店などではありえないことだが、まあこの店は個人経営の小さなコンビニで、田舎ゆえにいたって暇であるから、そのようなシステムが通っている。  そんなわけで、新人への説明は、暇な時に先輩からなされる。接客や業務内容なども、その際に教えられる。  
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