桜狩り倶楽部

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   金額の打ち方や、紙幣の取り方などを松本さんに教えながら、俺はやはりあの情景を思い浮かべていた。  神秘的な光景だった。  神秘的で、怪しくて、恐ろしくて──、そして美しかった。 「ねえ。人を殺してみたいと思わない?」  急に彼女にそう話しかけられたのは、放課後の教室でだった。  夕暮れ時で、俺と彼女は日直の仕事をしていた。 「は?」  そんなことを言われれば、普通面食らう。俺も当然、眉を寄せて彼女を見た。        キノシタ ミユキ  しかし彼女、木下 美雪は、爛々と目を輝かせて、続けた。 「あたしを殺したいと思わない?」  この時まで、俺の中での彼女は“明るい優等生”であった。  見目麗しく、はつらつとして、勉強もでき、だれにでも分け隔てなく、人望も厚い彼女。  俺のみならず、美雪を知る人間は、大抵彼女をそういう人物として見ていた。そして彼女も、そういう人物として振る舞っていたはずだった。  
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