86人が本棚に入れています
本棚に追加
しかし、すぐにがばりと机にへばり付き、俺を見つめる。その口元には、確信したような笑みが浮かんでいた。
「あたし、恋愛小説より推理小説が好きなの」
「…………」
「ね? しようよ、あきらくん」
俺が断れない、とわかっているような瞳だった。
実際、俺は断れないのだ。俺は彼女を好きだったのだから。そして、すでにそれを彼女に伝え、はっきりとフラれていたのだ。
結局、俺は「いいよ」と言った。
彼女と関われることが嬉しかったし、秘密を共有できるのも嬉しかった。今まで知らなかった彼女の裏の顔が知れたのも、なぜだか感慨深かった。
「秘密の殺人倶楽部、結成──だね」
美雪は、いたずらっぽく笑った。
「古淵さん。打ち込みって、これでいいんですか?」
夢から覚めたように、俺はハッとした。本当に白昼夢でも見ていたように、リアルな映像だった。
松本さんが、首をひねる。
「間違ってましたか?」
「大丈夫、それでオッケーです。すみません」
最初のコメントを投稿しよう!