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この学校が次の俺の舞台か…。心躍らせ青々とした桜の木を眺めながらしっかりと黒帯をしめた。
校長室の扉を開けたと同時に
「若さ故に走る事も肝心だが、くれぐれも逆走するなよ」
白髪交じりの初老の校長がミチトに釘をさした。今までの行いを全て知っているのだ。学校とは協調性と理不尽を学ぶところ。悟った目でこちらをみているが、ミチトはそれどころではない。この満塁学園でなによりも、誰よりも早く、突きたかったのだ。
「それじゃあ今から君のクラスにいくからね。」
ボソッと話出したのは担任の「園木ナシオ」だ。
「ウッスいつでもどうぞ!」
「いやいや、どうぞじゃなくてその柔道着のままは困るよ~。ルールに従ってもらわなくちゃ…」
「柔道着だと?」
「そうだよ…困るんだよね…そういうの。制服があるんだからな。」
「こ…これは柔道着じゃあなんかじゃあねぇっ!オヤジの形見の空手着じゃあああいっ!!」
なんて声だろう。校長室に並ぶトロフィーが振動で倒れて床にさんらんしているではないか!
「つまらねー事ばかり言ってると、テメェのあばらを突き折ってやるからなっ!!」
ナシオの胸ぐらを掴んだミチトは拳を高く突き上げた。今にも突く勢いと形相。その高くそびえる拳タワーをつかんだのは校長だった。
「まてぃ!!それがお前の魂の言葉かっ?そんなものがソウルの叫びかっ!そんなちっぽけなタワーで死んだオヤジさんが喜ぶのかああぁっ!?」
体中に、いや魂の奥底に一筋の稲光が走ったのをミチトは感じた。ミチトは心から後悔した。お気に入りを間違えて、形見と言ってしまったことを。感の良い読者は気づいただろう。現時点でオヤジさんは生きている。
「すまねぇ先生。俺のソウルタワーはこんな所に建設しねー。建設予定地域は拳の先だぜっ!」
「そうか…。意味はよくわからんがお前のクラスにいくぞ…」
「そうだな先生。よろしく頼んだぜっ」
生徒はみんな教室にはいったのだろう。静かになった廊下を背広と道着が歩いている。校長はその光景を眺めながら、嵐がくるのを予感していた。
「あやつはただの嵐じゃなさそうだな。なんと荒々しく爽やかな風をまとっているのだ…。ふふっ」
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