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†
額から滲み出る汗を拭い、肩からズレかけている鞄をかけなおし、歩き出す。
ジーク
「…………トーマは元気にしてるだろうか」
知らず呟いた言葉に反応するようにビキッと後ろから音が鳴った気がする。
後ろにいる人物が拳を握り絞めたのだろう。
あぁ、トーマ。今日、俺はもしかしたらお前の死ぬ所を見るかもしれない。
アカシア
「ふ、ふふふふふ」
怒りに燃える底冷えするような笑いが後ろから聞こえる。
騎士になってから何度も負かされた先輩騎士が相手しても多分、今のアカシアになら負けるだろう。
怖い。振り向けない。
『トマからの連絡が騎士になったって報告以来ないからこっちから合法的に行ってやる』
学園を卒業して久しぶりにアカシアに会ったらこう言われた。
それでアカシア、昨年の試験には落ちたが、今年から騎士になってしまった。
それも四英雄の部隊の一つの『氷壁』に、だ。
トーマを追っかけてここまで来る情熱は凄い。
しかしトーマが好きならあんな暴力奮わなきゃいいのに……と思うがアカシアは聞かないだろう。
ジーク
「…………アカシア、そこの道だと城に行けないって」
アカシア
「あ、そうなんだ」
ホントはそっちの道のが城に近いのだが……アカシアの機嫌を少しでもよくしてからトーマに会わせた方がいいだろう。
頭の中でいくつかの美味しいと有名な屋台を思い浮かべながらアカシアの手を引っ張って行く。
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