24022人が本棚に入れています
本棚に追加
†
現在は白竜の月、第1周期の2日の午前11時。
本来なら今日、ジークが城に到着する筈だったんだが到着予定時刻を一時間以上オーバーしている。
列車がいくぶんか遅れたりするのは日常茶飯事だが、流石に事故なんかが起こらない限りは一時間は遅れないだろう。
で、もしかしたら街で迷う、又は遊んでいると思われるジークを捜して来いと言い付けられて俺は屋台が連なる界隈をまったりと散歩していた。
正直、捜す気は皆無だ。
だってあのジークが道に迷うとは思えないし、遊びほうけているとも思えない。
どうせ人助けでもしてて遅れてんだろう。時間潰してりゃ勝手に城につくだろうよ。まぁ、体裁だけは取り繕っておかにゃならんだろう。
トーマ
「どうだ? ジークの匂いはわかるか?」
俺の尻の辺りでモゾリとなにかが動く感触。
散歩、なんて行ったが俺は歩いていない。乗っているだけだ。
我が愛しの愛玩動物に。
まぁ、今じゃ普通の馬よりでかい体躯ですがねぇ。昔は小さくてわかんなかった両肩の角はもはや誇るように伸びている。
先が尖っていると危ないのでヤスリで削っちまったがな。この角、折るとすぐ生え変わっちまうから削るのも大変だった。
ブリュー
「がぁう」
体をぶるぶると揺らすブリューの反応からするとここじゃわからんようだ。
まぁ、食べ物屋台ばかりで匂いは混じりに混じっているだろう。
流石のブリューでもわからんか。
トーマ
「ならいいか。帰ろうか」
ぽんぽん、と背を叩き帰りを促す。ブリューは賢いコなのでむやみに方向転換なんかせずに建物の屋上を渡る。
んぅ、頬を撫でる風が気持ちいい。
因みにさっきまでいたのは屋台の連なる界隈に設けられた広場だからな。
あの人込みの中にブリューがはいったら迷惑がられる。
最初のコメントを投稿しよう!