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そろぉ~り、といった見事な足運びを狼っぽい魔物のブリューは行った。
こんな時じゃなきゃ声を大にして褒めてやりたいよ。今、大声出したらアカシアに見つかる。
昔っから離れた場所だろうとあいつは俺を見つけるのは上手いからな。かくれんぼは全敗だ。
トーマ
「いいか、石すら不用意に踏むなよ?」
声を潜め、ブリューはゆっくりと足を運んでいく。
ふ、こちとらブリューとの意思疎通なんて容易なんだよ。
抜き足、差し足、忍び足。
俺はブリューにしがみついているってだけなのに緊張からか、噴き出す汗が髪を濡らし、額に張り付く。
トーマ
「邪魔くさ」
その言葉と同時にふぅ、と前髪を吹き上げると……
アカシア
「あぁぁぁぁぁぁあああ!!」
街中であるのも構わず、屋上を指差したアカシアに見つかった。
え? 今ので見つかったの?
トーマ
「ブリュー、全速力でアパートに帰還だ!」
振り落とされないようにブリューの両肩から生えている角にしっかりと掴まり、命令を下す。
アカシアの声が聞こえた時には即座に走り出していたブリューは流石の一言だろう。
問題点は俺が喋ろうとするのを考えてなかったのか、走るのが急すぎて俺が舌をかんじまった事くらいか。
ブリュー
「くぅん」
俺がひそかに呻いているのに気付いて労るような鳴き声を出すブリューは良いコだと思う。
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