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訓練場の扉を開けた。
炎が爆ぜ、氷が砕ける音が聞こえて来る。ジークはどこか疲れたようにして頭を抱えていた。どうしたというのだろうか。
アカシア
「さって、まだ私の順番は廻って来てないようだね」
ではトーマを捜そう。そうはいっても捜すまでもない。この限られた空間の中では隠れる事等不可能だろう。中央の敷石を中心にぐるっと歩いていけばいつしか見つかる。
ジーク
「…………なぁ、アカシア……その、いきなり殴ったりはするなよ?」
アカシア
「はぇ? なんで私がトマを殴らないといけないの?」
…………さっきまでトーマを追い掛け回し、キレていたのを忘れている。
その場の気分なんかで行動するから怒りも一過性の物だったんだろう。
よかったよかった、とジークは胸を撫で下ろした。が、再び横にいたアカシアから魔力じゃない何かが立ち上り始めた。
その視線の先には……
ジーク
「…………トーマ……と、イーザ」
以前送られて来た写真の中にいたイーザが弁当らしき包みを手に持ち、トーマと談笑していた。
なんて間の悪い……。いや、まぁ今日じゃなかったとしてもいつしかこうなったかと諦める。
横にいる嫉妬しまくっている乙女を止めるなど自分には出来そうもない。
反射的に掴んでいたアカシアの肩から手を離し、
ジーク
「…………アカシア、せめて殺すな」
最低限の言葉を投げかけて乙女を解き放った。
この場合、猛獣の方が表現として合っているだろうが彼女は一応……乙女だ。
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