大樹の場合 2

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 絶対的な死が迫る。  ヤバい。  避けなきゃ死は免れない。  狙いはどこだ?  奴の宣言通り、脳髄──頭か?  それとも心臓か?  首か? 腹か? 腕か? 脚か?  どこに命中しようと、当たれば間違いなく一撃必殺。  しかし、当たらなければ問題は無い。  さっきみたいに躱しさえすれば、必ずチャンスは作れるはずだ。  考えろ。  焦らず考えろ。  整理して、吟味して、判断── 「──してる暇なんてあるか、畜生おっ!」  俺の悲痛な叫びが木霊した。  着弾!  轟音と衝撃をまんべんなく撒き散らし、白い羽はその力を余す事なく解放する。  原理は不明だが、最早どうだって良い。  目は一瞬で見えなくなった。  耳は一瞬で聞こえなくなった。  鼻は一瞬で利かなくなった。  きっと、味覚も同じ。  ──けれど、痛覚だけは残った。  足を捻った時とは段違いの激痛が、全身で満遍なく暴れ回る。  無茶苦茶痛い。  つまりそれは。 「痛……ってえな。何だよ、生きてるじゃねーか、俺」  一瞬だけ、もしかしたらピンチな状況に呼応して、俺の血に眠る勇者の力か何かが目覚めたのかとも思ったけれど、どうやらそんなご都合主義は起こらなかったらしい。  全身に力がみなぎる感じも無ければ、変身したり体が光ったりといった変化も特には認められない。  ……当たり前だけれど。  視界が戻り始めるにつれ、俺が生き残れた理由が明らかになってきた。  無数の木の根や幹がアスファルトの地面を突き破って、裏路地を占拠している。  それはまるで、俺を守るかのように壁を作っていたのだ。  よく分からないけれど、何かおかしな事が起きて、何故だか助かった……?  結局は、ご都合主義もここに極まったようだ。  しかし、どうやら俺には息つく暇も無いらしい。  理由は明白。  俺は何者かに強い力で腕を引かれ、そのまま連れ去られてしまったのだから。  突然現れた木々のお陰で羽矢の直撃こそ受けなかったにしろ、爆心地のすぐ近くに居た俺は全身に満遍なく爆風を浴びている。  無理な負荷がかかった俺の身体は、あまりの痛みの強さに咄嗟に脳のブレーカーを落とす事を可決してしまったようだった。  まだ完全には視力を取り戻していない視界が暗転する──
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