大樹の場合 3

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 頭がはっきりしてきたことで、彼女が全身に大小様々な怪我を負っている事に気付いたからだ。  命掛けで糞天使に挑んでくれていたであろう事が分かるだけに、彼女を責めるのはお門違いも甚だしいと言わざるを得ない。  そもそも、彼女に責任転嫁しなじった所で、きっと由加は喜ばない。  人懐っこい笑顔が脳裏を過り、俺は慌てて頭を振り、雑念を追い出した。  過去に囚われ未来を失う事は、俺には許されないのだ。  守らなくてはいけない約束があるのだから。 「私の力が至らなかったばかりに……申し訳ありません」 「いいって言ってるだろ? 暗くなるのは後回しだ。あんまり何度も繰り返すと──」 「…………」 「起こるぞ?」 「おはようございます?」 「興るぞ?」 「活性化するのは良い事ですが、無理はなさらないよう」 「熾こるぞ?」 「火遊びは感心しませんね」  息はピッタリだった。  何者だこいつ、と思わず突っ込みを入れそうになる。  本当はそういう気分でもないのだが、俺は自分の気持ちに嘘を吐く事にした。  今は悲しみに沈むべき時ではない。 「はあ、こんな時なのにマイペースな方ですね……由加さんの事もあって、もっと落ち込んではいないかと心配していたのですが」 「落ち込んでるよ。すっげー凹んでる。でも、やられっ放しは気に入らねーからな……一矢報いてやらなきゃ、おちおち死んでやる事も出来ねーよ」  無論、こんな所で死んでやるつもりは無いのだけれど、ただの高校生の手に負えるような相手じゃない。  奴は、物理法則を無視し放題な射撃武器を持っている。  腐って歪んで壊れて崩れても再生天使、油断していれば俺の方がお陀仏だ。  …………。  ……天使だって……?  その時、ようやく落ち着き始めた頭が、早速一つの可能性を示唆してきた。  赤髪が敵ではないという確証は無いが、あの糞天使の言葉よりは信用しても良い気がする。  俺はさっそく、思い付いた仮説の検証に入る為、彼女から情報を得る事にした。
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