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すなわち、奴は何故“再生天使”を名乗ったか、その点に尽きるのだ。
そうせざるを得ない理由があったのだろうか?
いや、恐らくはそうじゃない。
嘘とは真実を隠す為に使うものである。
羽野郎が正体を偽っているならば、かならずそこには正体を偽りたいだけの理由が必ずあるはずなのだ。
それを暴く事が出来れば、奴は必ず隙を見せるだろう。
その時が、本当の勝負の時である。
俺は慎重に言葉を選び、種明かしを続けた。
犯人を追い詰める名探偵にでもなったような気分だ。
「あんたは再生天使を名乗り、それらしく振る舞おうとした。けど、決定的なミスを犯してしまった」
更に羽野郎の“左手”から力が抜ける。
マウントポジションをキープしながら、しかし奴は俺の言葉に押し潰されそうになっていた。
羽野郎は俺が真実に近付いている事を、確かに恐れているようである。
「あんたは空を飛ばなかった」
「……飛行している所を目撃していないから、天使ではないと確信しただと? 愚物が。獲物が地上に居るというのに、空へ上がる意味などあるものか。我が楽しみはお前達愚者を言の葉にて絡め取る事であるのは、お前も理解しているのであろう? 望むなら空を舞う位見せてやろうではないか……お前を“再生”した後で、だがな!」
「違う違う、問題はその後なんだって。つまり、俺と赤髪が皇樹を囮に逃げ出した後の事」
羽野郎は多分、少しくらいなら空を飛ぶ能力を持っている。
厳密に言うなら、飛行ではなく滑空だろうけど。
それを裏付ける行動を、奴は取ってしまったのだ。
沈黙した羽野郎は、俺の両手に“左腕”を押さえられた体勢のまま、俺の次の言葉を待った。
「分かんねーかなあ? あんた、飛べるんなら空から俺を探せば良かったじゃねーか。でも、あんたはそれをしなかった。上から探せば、きっと俺達を見つける事は簡単だったはずだ」
裏路地のどこかに隠れてしまった俺と赤髪を空から探す事を、羽野郎は失念していた訳ではないだろう。
たとえ奴が失念していたとしても、あの由加が提案しないとは考えられない。
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