卯月の章 嘘つきパン屋さん

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四月。 やっと決まった会社、初出社の朝、僕は慣れないネクタイ、スーツに苦戦していた。 昨夜は緊張のあまり眠れていない。借りたばかりで、まだ殺風景なアパートの一室にも慣れず、毎朝起こしてくれていた母親の存在もない。 母さんが用意してくれたスーツって、やたらと僕の体型に合ってしまうんだなと思いながら、朝食も食べずにアパートから飛び出すようにバス停まで走る。 学生っていう言葉に甘えられていたときは、いつも遅刻ギリギリの朝、寝坊は小学生の時からぬけない癖みたいなものである。
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