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第1章『二人の刑事』
1982年2月
今日は朝から朝刊やニュースなどで、アメリカ軍事基地で細菌兵器が盗まれた事件が、広く世界中を震撼させていた。
日本の警察もテロなどの警戒にあたり、非番の人間も数多くたたき起こされていた。
当時の私達は主に、殺人事件を追ってる、中堅刑事だった。もちろん、その事件のことは新聞で読んでいたから知ってはいたが、今抱えている事件で手いっぱいになっていた。
「秋山どうする?日本で細菌テロだってよ。」
大場はわけのわからんことを言っていたが、それは別の奴に任せておけばいい。と3回も言った。
夜も遅くなり、警察署に戻った私に総本部から電話が入る。まだ2月で寒いことは肌で感じていたが、心の底から震えたのはこの電話が最初で最後だろう。。
「大場...。明日からアメリカだ。家帰って仕度してこい。」
それだけで大場は何をしにいくのか検討がついていたんだと思う。
その日は飲みにもいかずに、家に帰った。
刑事たるもの急な事件はつきものだが、アメリカ行きを家族に伝えるのは勇気がいる。ましてや、休みなく細菌のニュースが流れていればなおさらだ。
伝えた時の妻の顔は今にも泣きそうな顔をしていた。
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