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博物館の中。教師の長たらしい説明に、見学の生徒達はもう上の空か、または隣の生徒と話している。
綾瀬光彦【アヤセミツヒコ】も例外ではなく、前者に当てはまった一人である。ぼんやりと硝子のゲージに並べられた人形を見ていた。
流石に展示されているだけあってどれも保存状態は良好で美しい。
「お、綾瀬。興味があるのか」
「は」
唐突なふりに語尾を上げることも、それに感情を込めることも叶わなかった。
「バトルドールと言う精密機械だ。もとは感情機能に長けた生活補助ロボットだったんだが……」
しかし、教師はそれに気分を害することなく勝手に説明を始める。もはやうんちくに近い。
「センセー、そろそろ自由見学したいんですけど」
のろのろと緩慢な仕草で手を挙げて教師に声を投げかけたのは光彦の隣に立つ、赤髪の生徒。二重の緑眼に通った鼻筋。左耳に開いたボディピアスが目に付いた。
そうだな、と今更時計を確認してまだ物足りなそうな顔をして話を中断した教師にやれやれと息を吐く生徒達。
ふと赤髪がこちらを見る。意味もなくボディピアスを見ていた光彦と視線がばっちりと噛み合った。
「後で遊ぼうぜ」
どうせ空いてるだろ?と緑の瞳がに、と笑った。
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