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自由見学。とは最早、名目でしかない。
因みに光彦の班は都市を色々見て回る予定だったのだが、既に各々が勝手に歩き回っており協調性のなさが浮き彫りになる。
「お前、名前なんてーの?」
そんな中、律儀に声を掛けてくる男子生徒が一人。例の赤髪である。
「綾瀬光彦」
「俺、銅颯斗【アカガネハヤト】。好きに呼んでな」
そうして銅はニヤリと笑う。どこか意地悪げなそれは如何にも女性受けが良さそうだ。
「おい、颯斗」
声の方を振り返ると、真っ白な髪の男子と若干登頂部の黒い――俗に言うプリンという状態――金髪の男子が肩を並べていた。
「白眉、浩樹」
「……知り合いか」
「知り合いも何もダチだよ。コイツ、綾瀬光彦だって。今さっき声掛けた」
一応軽い会釈をする。
「こっちは白眉冷貴【ハクビレイキ】」
「よろしく」
冷貴、と呼ばれた白髪は握手を求める。背は高くほっそりとしており、差し出された手もすらりとしている。
これでもう少し顔に愛想があればモデルとしてやっていけそうだ。
軽い握手を交わす。
それが終わったのを見て今度は浩樹と呼ばれたプリンを指す。
「こいつは金沢宏樹【カナサワヒロキ】」
「よろしくな」
笑顔を浮かべて、こちらとも握手をする。
「さて。遊びに行くか!」
「……一応見学だぞ」
延びをして声を上げた颯斗を冷貴は冷ややかにみる。
普段からこんな調子だ、と宏樹は片目を閉じて見せた。
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