10人が本棚に入れています
本棚に追加
/19ページ
「……つっかれた……」
ホテルの一画。力無く光彦はベッドに沈んだ。あれが最近の若者のテンションか、と自分だって年代は変わらないのにどこか浮き世離れした感慨を抱いて、ため息を吐く。
「おい、綾瀬。飯どうすんの」
ベッドから動かない光彦を見かねた同室のクラスメートが声を掛けた。
「……食欲、ない」
「銅だろ?アイツ等となんか食ってきたか?」
「……有名なのか。彼奴は」
寝返りを打って男子生徒に問う。他の連中は食事をとりに既に下に行っているようで部屋には彼一人が立っていた。
「有名も有名。イケメン集団で通ってる」
「……俺がかなり浮いてるかは分かった」
そんなきらびやかな集団に一人地味な奴が入るんだからこれ以上滑稽な絵柄はない。
「腹が減ってない訳じゃない……眠いんだ」
だから放っておいてほしいとは流石に口にはしなかったが、しっかり伝わったらしい。寝返りを再度打ち、背を向ける。
苦笑した気配と共にベッドから離れ、ドアが閉まる音。
確認より先に、光彦は意識が落ちるのを感じた。
最初のコメントを投稿しよう!