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「つ、妻は……?」
「…残念だが……」
「そう…か……いずれ俺も…逝くな」
悟った様に彼は言った
「そんなこと言うな!お前まで逝ったら桜はどうなるんだ!?」
「章一…、頼みがある」
彼はもう動くことすら困難な体を無理に起きあがらせ、俺の胸ぐらを必死に掴みながら言った
「……なんだ?」
「桜を…預かってはくれないか?俺も妻も頼れる身内がいないんだ……。身内は……くっ、桜と会ったこともない他人みたいな奴だ……。ハァハァ…、だったら桜が懐いてるお前たちに預けた方がずっといい…。くっ、引き受けて…くれるか?」
彼は必死に懇願してくる
きっともう助からない
最後は安心させてあげなきゃいけないな…
「………わかった…。桜は俺が責任持って育てる」
「そうか…ありが…と……」
彼は一瞬安心した顔をした後、必死に掴んでいた手から力が抜けバタンと床に倒れた
そしてそれから数分後
救急車が駆けつけて来たたが桜の両親が病院に運ばれることはなかった
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