逃げようか、さぁ。

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固そうな短めの髪に、しっかりした体つきの、ヴェールよりも年上であろう男。 身に付けている服装は傭兵を連想させる。 顔には額から左目下にかけて大きな傷跡があった。 「は……っ、離して下さいベルゼ団長っ!!」 顔を真っ赤にしたヴェールが突っぱねるように彼から離れる。 ベルゼと呼ばれた男はそれを気にする素振りも見せず、しゃがんでリヴェスとフューリーに視線を合わせた。 「俺はベルゼ。ベルゼ・ノワールな。こんなんでもトランプ騎士団団長だ。よろしくな、少年」 ぐしゃっ、と豪快にふたりの頭を撫でるその手はゴツゴツしていた。 闘う人の手だ。 「えっと……団長さん……団長さんっ!?」 把握するまでに少しかかったらしいリヴェスが、驚いて声を荒げた。 「フューリー、騎士団の団長さんだってっ!!」 「リヴェスは落ち着け。あんたは気安く触んな」 そういってリヴェスをなだめつつベルゼの手を払いのけるフューリー。
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