ネオン

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イチは慣れた手つきで車を走らせた。 「大丈夫? 寒くない?」 「大丈夫」 でも、少しだけ寒いかなって付け加えようとしたら、イチはすでに暖房のスイッチを入れていた。 「遠慮はなし! オッケー?」 「はぁい」 あたしのやる気のない返事にも、よくできました。って笑顔になる、イチ。 イチって神経からいい人なんだなぁて思ったりする。 イチはあたしの視線に気付いたらしく、ニコッと笑い、自己紹介しよっか。と言ってきた。 あたしの返事も待たずにイチはしゃべりだした。 「一村一」 あとに続けって意味だろう。 名前、 ……教えてやるか。 「小村杏奈」 「こむらあんな…杏奈ちゃんかっ。 26歳」 「17歳」 「17歳か…。どうりで真央と重なるわけだ。 好きな食べ物は―…」 こんな感じでずっと自己紹介をしあった。 イチのいろんな事がわかった。 好きな食べ物は、真央さんの手料理。 嫌いな食べ物聞いたとき、ツッコんじゃったよ。 ピーマンって言うんだもん。 子供かってね。 趣味は、飲みにいくこと。 趣味になってるのか? なんて思っていたらキッと車が止まった。 「着いたよ」 あたしの目の前に広がったのは、ふつうの家の3倍はあるんじゃないかと思うくらい広い二階建ての一軒家。 イチは車庫に車を止めると、あたしを玄関まで誘導した。 玄関は花がたくさんあって、可愛らしかった。 あたしが花を見ているとき、家の中からパタパタと音がしたと思ったら 「おかえりなさい」 いきなり扉が開いた。 出たのはきっと真央さんだ。 「ただいま」 あたしは扉の裏にいるため、真央さんは気付いてない。 もちろん、あたしも真央さんの姿が見れない。 「今日はお客さん連れてきたんだ」 イチはそういうと、手招きをした。 あたしはイチの元へ行くと、ぺこっと頭を下げた。 頭をあげると 「可愛らしいお客さんね」 ニコッと微笑んでる真央さんがいた。 初めて見た。 あたしより綺麗な人。 初めて見た。 こんなに綺麗な人。
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