思いを馳せた姫

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誘拐犯さんの言う通りあたしは逃げようと思えば逃げれる。拘束も何もされていないし、走って人通りが多い場所まで逃げて捕まらない自信はある。大声を上げて、誰かに助けを求めることだって可能だ。 だったら、何故それをしないのか。 「だって、誘拐犯さん危害をくわえるような人じゃなさそうだし、」 「だし?」 「――楽しそうだから」 不謹慎かも知れない、無神経だと罵られるかも知れない。けれど、何の変哲もない毎日に飽き飽きしていたあたしにとってこの事件は胸を踊らせるような出来事なのだ。          
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