62人が本棚に入れています
本棚に追加
またいつもの朝が来たー。
いつものように渚は自転車に乗っていた。
駅の駐輪場に停めると、渚は電車に乗り込んだ。
渚は33歳の平凡なOL。
いや、悪く言えばおばさん。
結い上げた黒髪
睡眠時間を擦り減らしてまでの
化粧
最近買った洒落たスーツに身を包んでいる。
部長「白石くん。今日ちょっと残業できるかな?」
渚「あっ、はい」
渚は素直にうなずいた。
誰に頼まれても嫌な顔ひとつしない。
…ように見せている。
部長「お疲れ様。もう上がっていいよ」
残業を終えると、上司が気遣うように言った。
渚「はい。失礼します」
仕事をきっちりこなした渚は、丁寧にお辞儀をして会社を後にした。
会社の帰りも、寄り道をするまでもなく駅に向かう。
駅前のアーケードに差しかかると、ひとりのお婆ちゃんがスーパーから出てきた。
重そうな荷物をさげ、よろよろ歩くお婆ちゃんは、歩行者とぶつかって尻もちをついてしまった。
渚「大丈夫ですか?」
すぐに渚は駆け寄ると、お婆ちゃんを抱き起こした。
婆「あぁ、ありがとう……」
歩道に落ちた買い物袋を拾ってあげると何度もお辞儀をしながら、お婆ちゃんは歩いて行った。
電車から降りた渚は、まっすぐ駐輪場に向かった。
……だが無断駐輪の自転車があって、なかなか出すことができない。
渚「ハァ……」
ため息をついた渚がもう一度自転車に手をかけた時だった。
最初のコメントを投稿しよう!