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少年「おらっ! 殺るんじゃねえのかよ!」
突然大声がして、手を止めた渚は暗い路地の方に目をやった。
少年「何ビビッてんだよ!」
血まみれになった少年が叫んでいる。
3対1のケンカだった。
その様子を渚はじっと見ている。
男たちが3人がかりで襲いかかる。
「ボコッ!……グシャッ!」
まるでなぶり殺しだ。
一方的にやられた少年は、たちまちそこにうずくまった。
とどめに蹴りを入れた男が、
男「しつけえんだよっ!!」
と.仲間と引き上げようとした時だった。
少年「……待てよ……まだ終わっちゃいねえんだよ……」
よろめきながらも、少年はまだ立ち上がろうとする。
そして、
「ペッ!」
と、吐き出したツバは、真っ赤に染まっていた。
そのかたまりの中に、少年の折れた歯を見つけた男が、気味悪そうに言った。
男「歯?……こいつ死ぬまでやる気かよ?」
警察「おい!何やってるんだ!」
通りかかった警察官が叫んだ。
男「やっべ!」
男「おい…づらかろうぜ」
その場にいた少年たちが慌てて逃げ出した。
渚も逃げようとしたが血まみれになった少年が倒れているのを放っておくわけにもいかない。
警察官がだんだん近づいて来る。
渚「あぁ、もう!」
渚はつっぷしている少年の腕を肩に回し、自分より体重が重いであろう少年を抱え上げ、急いで安全な場所に少年を移した。
こういうお人よしなとこが、自分でも腹がたってくる。
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