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少しの間、沈黙が続いた。
時計を見ると、あれから大分たっている。
渚(徹夜したらギリギリかな…)
普通の人なら化粧をしたり、服を選ぶ時間を考えると、これでは会社に間に合わないとイライラするものだが
そこまで若い乙女のようなことはしない彼女にとって、さほどデメリットではない。
そうこう考えてるうちに少年が動き出した。
まだ出血も止まってないのに
……無茶な事をするものだ。
渚「ちょっ!まだ動かない方が……」
少年「いや…もう平気です。迷惑かけてすみませんでした」
…今度は敬語だ。
そう言うと、血まみれの体で少年は帰っていった。
彼が座っていた場所には、生々しい血の跡がついている。
渚(……帰ろ)
そう溜め息をついて、駅へと渚は歩いていった。
案の定、仕事が終わった頃には外はもう、明るくなり始めていた。
少年と別れた後、そのまま仕事をしていたので、腕には乾いた血がついている。
さすがにこのままでは会社に行くことはおろか、外も出歩けない。
仕方なく渚はシャワーを浴びていくことにした。
朝方はかなり冷える。
そのせいか、自分の肌から白い湯気が立ち込めている。
いつもなら20分程度で出るところだが、なかなか血がこびりついてのかない。
気持ち悪いのか、寒気がした。
渚「嘘でしょぉ~」
昨日の少年を怨(うら)みながら、渚は30分の格闘の末、なんとか洗い流すことができた。
時計を見ると遅刻ギリギリまであと20分を切っていた。
渚は急いで着替え、徹夜の原因でもあるMOを持ち家を出た。
駅の時間を考えると走っても間に合いそうにない。
どうにかできないものかと、思い悩みながら走っていると、目の前を自転車が通り過ぎた。
よく見ると昨日の少年だった。
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