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少年は渚に気付いたのか、こっちを振り返った。
渚が(何故か)お辞儀をすると少年は
少年「乗ってきます?」
と、逃げようとした私を引き止める。
いきなりの言葉に、渚は戸惑いを隠しきれなかった。
渚「何言ってんの?皆に見られるでしょ!!ただでさえ、遅刻しそうなのに、何冗談言って…」
少年「乗って行けば遅刻もしないで済むだろ…?」
渚「………」
強引に誘う少年に渚は負けた。
仕方なく(仕事の事を考えると乗って行った方が良さそうかと思い始めていた…)少年の自転車に乗っていく。
渚「あんた、名前は?」
背中越しに恐る恐る、聞いてみる。
少年「………。」
少年は、黙々と自転車をこぐ。
(イラ……)
渚「ねえ…聞いてる?」
少年「優也…」
渚「へぇ…。何歳?」
優「23歳」
渚(若っ……)
自分で聞いておきながら、驚く。
渚「この前、何であんな喧嘩を…?」
優「聞くんだ…」
渚「『聞くんだ』って…聞いちゃいけないの?助けてあげたのになぁ…。」
優「まぁ…いろいろとね」
渚「………」
冗談のつもりなのに、優也は笑い飛ばしたりしなかった。
こんな話をしてるうちに会社についた。
優「……こんなおっきい会社で働いてるんだ…」
渚「どうもありがとう。じゃ」
優「あっ!あんた名前は?」
渚(あんた……って…)
渚「何で?」
優「いや…一応聞いときたくてさ」
渚(何で名前なんか…)
渚「渚………」
偽名つかってやろうかと思ったが、こんな若者を騙すおばさんという肩書に、引け目を感じた。
渚の策略をよそに、優也は何かを書いている。
ひざの上で、書きにくくないのだろうか……。
優「これ…俺の携帯の番号…。何かあれば、かけていいから…。じゃ…」
そう言い残すと優也は去っていった。
渚(何もないと思うけどなぁ…)
そういいつつも、紙を胸ポケットにしまう。
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