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腹に響くベルハルドの声に、ルアンは引き攣った笑みを浮かべ続けている。
顔といい雰囲気といい、ベルハルドを恐れる気持ちもわからなくはないが―――
笑みを一切浮かべていない表情の下で、ベルハルドは一人沈んでいた。
こんな見た目ではあるが、何気にガラスのハートの持ち主のようである。
「―――拒否権は?」
「アンリ相手に、あると思う?」
「…………」
ルアンのその言葉に、つい納得してしまうベルハルド。
あの猪突猛進娘の中に、きっと『NO』という言葉はないのだろう。
それがわかりきっているからこその、ルアンの一言である。
彼なりにいろいろ葛藤した経験があるのか、そのどこか疲れたような表情は哀愁を誘うものだった。
「とりあえず、教室まで来てくれない?」
クラス全員の命(?)がかかっているから―――
そんな副音声が聞こえてきそうな、今日この頃だった。
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