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ポカポカと、柔らかな陽射しが降り注ぐお昼時。
雫は白いシャツの袖をまくったまま、未だに慣れない我が家を出た。
「ちょっと、シズ。
どこに行くわけっ?」
「散歩。」
何故か掃除道具を片手に持つ愁に、雫は何とも端的に答える。
学校では仕事ということもありそれなりに喋っているが、家に帰るといつもこんな感じである。
「散歩って―――道わかるの?」
「…………」
愁のその言葉に、一瞬だが雫の動きが止まる。
しかし振り返ることなく、再び前に足を進めていた。
「とりあえず、散歩してくる。」
「我が家の掃除もせずに?」
「言っておきますけど、散らかしたのはあなた様じゃないですか。」
恨めしげに雫の背中に言う愁に、すかさずレイラがツッコミを入れる。
もちろんというのは何だが、レイラの手にも掃除道具が握られていた。
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