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そこは、ある夜の高層ビルの一室。
そこには、無残に広がる頭と胴体が分かれている屍と、二つの人影があった。
「お、お前はだ、だ、誰だ!」
一人の黒髪で少し太り気味で髭もはやした、いかにも金持ちといった服装の男が、体をビクビク震わせながら怯えたように謎の男に言った。
「俺か? どっかの誰かさんに依頼されて来た……鬼、かな」
そう、銀髪で赤い目をした十代半ばの美しい、もしくは格好いいとでも言うような、美しい顔立ちの青年が言った。
「い、依頼だと!? な、何の依頼だ!!」
「殺しの依頼」
鬼と名乗る謎の男は、素っ気なく答えた。
「な、何故俺を殺ろそうとする……?」
男は更に、体を震わせ怯えた。
「何故お前かだって? 依頼だからだ。それに、俺の使命でもある」
鬼は馬鹿にしたように、しかししっかりとした眼差しで答えた。
「た、頼む! 見逃してくれ!」
男は涙ながらにせがんだ。
「それは無理だ。確かに俺はお前に、何も恨みは無いが、お前にくれてやる慈悲もない」
「た、頼む!」
「まぁ慈悲ぐらいはくれてやるよ。すぐに楽にしてやる」
そう言って、鬼は男に一歩、また一歩と近付き……
「た、頼む!助け――」
男が言い終わる前に鬼は、男の首をねじり切った。
「……任務完了。さて、帰るかな」
そう言い残し、鬼は闇の中へと消えた――
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