material memory《物質の記憶》

少年

興『はぁぁ…なんとか間に合うな～…』

トコトコ歩いている興の後ろから聞き覚えのある声がした。しかし、かなり疲れている興にはよく聞こえなかった。

『…………！』

何か言ってるのが分かるが後ろ見る余裕がない。聞き覚えのある声が大きくなってくる。しまった。あれを無視すると……気付いた時にはもう時すでに遅し。興の脳天に固い鞄が直撃した。

『私を無視すんなー！』

興『いて！　も～、何するんだよ～雪ちゃん！』

雪『ふん！　私を無視したらどうなるか…幼稚園の頃から教えてきたはずだけど？』

彼女の名前は西沢 雪。学園１の美人だと男共のなかで有名になっている。彼女の笑顔は飢えた男共確実にを仕留める破壊力を持っている。興とは幼稚園から一緒で、小、中、高いつも一緒にいる。クラスでは付き合っているのではないかと噂になってはいるが、本人はそんな気はサラサラない、と思う。

しかし、１番の仲のよい人はいつも一緒にいる興であることは間違いない。彼女には謎が多く、メルアドも興しか知らない。そして興は雪のメルアドは絶対に他の人には教えない。雪との約束をしたからではなく、教えたらまた鞄でボコボコに殴られるからである。