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殺気がトゥースの肌を刺す。
静かにオニキスから降りたトゥースはなるべく刺激しないように剣を素早く抜き、剣を回転させて横に構える。
「オニキス、任せたぞ」
相棒のオニキスの背を軽く叩くとそれに答えるように鳴く。
オニキスは草でおおい尽くされた地面を数回掻くと突進した。驚いて飛び出したコドラゴンを額の角で威嚇し、器用に攻撃を避けつつ蹴り飛ばし乱す。
乱れた所をトゥースは素早く切り込み、オニキスの身を守りつつコドラゴンの数を少しずつ減らしていった。
斬り伏せながら、トゥースはなかなか減らないコドラゴンのことを考えた。これは、いくらなんでも異常発生では片づけられない。
コドラゴンは食欲旺盛だが、数が少ない魔の獣だ。異常発生したとしてもこの数は多すぎると感じたのだ。
「フッ!」
攻撃の手を休めることなく考えたトゥースは魔術師が何かが関与しているのかもしれないと結論づける。それならばいくら目の前のコドラゴンを退治しても意味はない。
「くそ。どこに元凶がいる?」
それに気づいたのはオニキスだった。オニキスは地面を思いっきり蹴り、高く跳び上がると、その大きな体からは考えられない身軽さで木の幹を駆け登っていく。
オニキスはある一点に体当たりするように飛び込む。
「くっ!?」
女の驚きの声が聞こえると同時に黒いモノが降ってきた。猫のように宙で体を捻ると綺麗に着地した。遅れて長い黒のスカートと髪が追いつく。攻撃をかわされたオニキスもまた体を器用に捻ってトゥースの横に優雅に着地した。
トゥースとオニキスの前に黒をまとった女が敵意を込めて睨みつける。
「ニンフか」
「チッ。意外と頭が回る人間ね」
妙に人間臭いニンフをトゥースは見つめる。雰囲気は全く違うが、フロアと似た容姿だった。
凝った美しいレースが好きな貴族の娘が着るような服と黒羽の髪飾りが漆黒の髪を飾り、銀色の瞳がトゥースの姿を映す。
「お前がコドラゴンの異常発生の元凶か?」
「そうだったら?」
傲慢な態度で、長い髪を手で優雅に払う。
「あまり気が進まないけど、封印か無理なら暫く悪さが出来ないように弱らせるよ」
剣を前に構えたトゥースは険しい表情で女に忠告する。女は鼻で笑っただけだった。
「やっぱり人間は愚かね。支配者面なんてして。真の支配者は私達よ。
それに女神たる私を傷つけられるかしら?」
口角を上げ女は残酷に笑う。
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