第2章 オニキス

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ルキオラの一件とトゥースとフロアの不思議な同居生活が早くも一週間経ったある日。 何でも屋オニキスの店の前を誰かが通る度にフロアが挨拶し、話しかけたおかげなのかちょっとした仕事の依頼が入るようになった。本当にただのちょっとした仕事ならどんなに楽かとトゥースはこの一週間悩む。 「嫁さん大事にしなよ」 「まだ結婚してないから」 庭先で薪を割りながら幼なじみであり近所で花屋を営んでいるシトラスと話していた。 花屋に見えない太い腕と厳つい顔にピンクのエプロンをつけたシトラスは豪快に笑いながら細いトゥースの腰の辺りを何度も叩く。 「俺なんてまだ独身よぉ」 「俺もだよ」 かっこよく顎に手を当てて自慢するシトラスにトゥースは投げやりに言う。実際には自慢できないことだと言うのにシトラスは昔から変な事を自慢する変わった性格なのだ。 「トゥース! トゥースってば! いないの?」 表からもう1人の幼なじみリファの声が聞こえてきた。シトラスに薪割りを邪魔され、仕事にならないと判断したトゥースは薪割り斧を割った薪の束の上に置くとリファを大声で呼ぶ。 「庭にいたの」 リファはいつもの魔術師の黒の正装姿で庭に現れた。彼女がこの姿で現れるのは仕事の依頼の時だけだ。
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