一章 お手伝い

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「待ちやがれ!! この糞餓鬼共!!」 周りの草木がざわめく程の勢いで、金髪を振り乱して森の中を走る男──楸叶(ヒサギ カナウ)。 彼は依頼された仕事で、今数人の中学生程の少年達を追っていた。 「うわー!! あの人まだ追って来るし!!」 「はぁ?! まじしつこいし」 少年達も叶に捕まるまいと、この森に詳しいのか、地の利を生かしてあちらこちらに曲がったりして走っていく。 小賢しい奴らだな…… こめかみに青筋を立てて走る叶の苛立ちはピークに達していた。 思えば、かれこれ少年達を追い掛け回して三十分以上が経つ。 今日は日曜日。 何が悲しくて少年達のケツを追い掛けなければならないのか。 『子供追い掛けるとか絶対面倒だと思うよ。ちょろちょろすばしっこいしね』 ふと、事務所を出て来る前に年下の社員(中学生)に言われた言葉を思い出した。 同種は同種のことをよくわかっているようだ。 「……あ゛ぁ゛!! こうなったら奥の手だ」 ちょっと痛い目にあわせてやる……! ニヤリと口角を上げ、叶はふいに空を見上げて頭上にいるであろう人物の名を呼んだ。 「幸(ユキ)!! あの作戦使うぞ!」  
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