271人が本棚に入れています
本棚に追加
/10ページ
「待ちやがれ!! この糞餓鬼共!!」
周りの草木がざわめく程の勢いで、金髪を振り乱して森の中を走る男──楸叶(ヒサギ カナウ)。
彼は依頼された仕事で、今数人の中学生程の少年達を追っていた。
「うわー!! あの人まだ追って来るし!!」
「はぁ?! まじしつこいし」
少年達も叶に捕まるまいと、この森に詳しいのか、地の利を生かしてあちらこちらに曲がったりして走っていく。
小賢しい奴らだな……
こめかみに青筋を立てて走る叶の苛立ちはピークに達していた。
思えば、かれこれ少年達を追い掛け回して三十分以上が経つ。
今日は日曜日。
何が悲しくて少年達のケツを追い掛けなければならないのか。
『子供追い掛けるとか絶対面倒だと思うよ。ちょろちょろすばしっこいしね』
ふと、事務所を出て来る前に年下の社員(中学生)に言われた言葉を思い出した。
同種は同種のことをよくわかっているようだ。
「……あ゛ぁ゛!! こうなったら奥の手だ」
ちょっと痛い目にあわせてやる……!
ニヤリと口角を上げ、叶はふいに空を見上げて頭上にいるであろう人物の名を呼んだ。
「幸(ユキ)!! あの作戦使うぞ!」
最初のコメントを投稿しよう!