一章 お手伝い

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  暫く経つと徐々に風が止み、少年達は顔を覆っていた腕を除けた。 その瞬間、目の前にいたのは…… 「よぉ。糞餓鬼共。随分振り回してくれたな?」 ニッコリと黒い笑顔を向けてくる金髪の若い男。 顔は笑っているのに、そのオーラは真っ黒で、男の後ろには鬼が見えた。 「うっ、うわぁぁぁ──!! ──ヒッ?! なんで?!!」 少年達は声を上げ後ろを振り返って逃げようとしたが、振り返ったすぐ後ろにはさっき目の前にいた男。 「人のもん盗んで許されるほど、世の中甘くないんだよ」 男が腕を上げた瞬間、少年たちの意識は暗い闇に落ちた。 「……ふぅ。やっと捕まえれた」 パンパンと両手を叩き、叶は紐で縛った少年達を見下ろした。 叶に手刀を食らわされた少年達は、暫く目を醒まさないだろう。 醒めた頃には、警察の中。 警察官に説教をされる少年の様子を思い浮かべ、いい気味だ、と叶はほくそ笑む。 「叶、この子達、警察に、送る?」 叶を見上げて、幸は尋ねた。 「あー、そうだな」 暫し考えた後、うんうんと頷き答える。 その様子を見て幸は少年達に向けて両手を翳したが、 「俺がするよ。幸、疲れただろ?」 「えっ? ……でも、」 言いかけたが、幸が言葉に詰まる間に、叶はパッと少年達に翳した右手を握った。 そうすると、ぐにゃりと少年達の姿が歪んだ後、スッと姿を消した。 「じゃあ、帰るか」 「うん」 ──楸万屋事務所へ。  
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