271人が本棚に入れています
本棚に追加
/10ページ
暫く経つと徐々に風が止み、少年達は顔を覆っていた腕を除けた。
その瞬間、目の前にいたのは……
「よぉ。糞餓鬼共。随分振り回してくれたな?」
ニッコリと黒い笑顔を向けてくる金髪の若い男。
顔は笑っているのに、そのオーラは真っ黒で、男の後ろには鬼が見えた。
「うっ、うわぁぁぁ──!! ──ヒッ?! なんで?!!」
少年達は声を上げ後ろを振り返って逃げようとしたが、振り返ったすぐ後ろにはさっき目の前にいた男。
「人のもん盗んで許されるほど、世の中甘くないんだよ」
男が腕を上げた瞬間、少年たちの意識は暗い闇に落ちた。
「……ふぅ。やっと捕まえれた」
パンパンと両手を叩き、叶は紐で縛った少年達を見下ろした。
叶に手刀を食らわされた少年達は、暫く目を醒まさないだろう。
醒めた頃には、警察の中。
警察官に説教をされる少年の様子を思い浮かべ、いい気味だ、と叶はほくそ笑む。
「叶、この子達、警察に、送る?」
叶を見上げて、幸は尋ねた。
「あー、そうだな」
暫し考えた後、うんうんと頷き答える。
その様子を見て幸は少年達に向けて両手を翳したが、
「俺がするよ。幸、疲れただろ?」
「えっ? ……でも、」
言いかけたが、幸が言葉に詰まる間に、叶はパッと少年達に翳した右手を握った。
そうすると、ぐにゃりと少年達の姿が歪んだ後、スッと姿を消した。
「じゃあ、帰るか」
「うん」
──楸万屋事務所へ。
最初のコメントを投稿しよう!