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「えー!俺と離れて寂しいだろう?月夜の為ならお兄ちゃんは…」
「即刻帰れ。そして柩に入って眠れ。」
足で思い切り皇命を蹴り飛ばして部屋から追い出すと満足気に両手をパッパッと叩いて目を細める。 扉の向こうから皇命が何か叫んでいるが、月夜の耳には全く入らない。後に、後悔する事になるのだが…
盆の上に食事を重ねると、龍之介はいつでも持っていけるようにテーブルの隅に置く。月夜は二人の元へと歩み寄り、腕を組んだ姿で二人を見下ろした。
その威圧感に、二人は圧倒される。
「………兄のいう事は本当だけど、黙ってなさいよ、二人共。天草や天城の耳にその事を入れれば……死ぬと思え。」
「ひっ!て、て、て、天国院様…」
「………分かりました。貴女なら、本気で行動に移してしまいそうですね。仕方なく、了承しましょう。」
満足気に頷き、ほんの僅かな他愛のない会話を交わし(とは言っても、月夜は一言も発さず大和達の会話を聞いていただけだが)二人は部屋から出て行き、月夜は一人きりになった。
窓から差し込む、満月を見上げる。
見事な月夜だった。
同じ名前である事を誇りに思う程。
亡くなった両親が始めで最後の与えたもの。
母さん
父さん
二人を殺して
私を捨てた
天草はもう、私の掌の上で踊ってるよ
私は 天草を滅ぼしてみせるからね
歪みきった心を映し出すような表情は怨念に満ち、目は月を睨むように見据える。カーテンを完全に閉じきって眠りに就くが、この時の月夜の表情を見ていた『彼』は、この先、月夜に溺れていくのも知る事も無く。
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