始まりは終わり

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朝、早めの時間に起きて、先日幸に言われた通りに制服を身に付けて、支度を整える。 引き出しから薬を少し出して、口に含み喉に押し通す。 時計を見ようとしたその時、ドアを叩く音が聞こえた。 「天国院様!龍之介です!朝ご飯お持ちしました!」 その声を聞いて素直に扉を開ける。 なんと言っても丸一日、ろくな食事をしていない。月夜は素直に従って、龍之介を部屋へと入れた。 「おはようございます!」 「…おはよう、朝から元気だこと……」 「これが取り得ですから。あ…朝は僕しか来れないです。皆様忙しい身でして…」 「朝から騒がしくても………困る………」 龍之介と朝食を終えて、共に寮を出て行き校舎まで向かう。 途中、月夜を始めて見る生徒達が興味津々とばかりに観察するように見つめる。隣に居る龍之介はすれ違う知り合いの生徒に挨拶を交わしながら月夜の様子を見る。 顔を前に向けたまま、正面の方向にある校舎を見て足を動かす。 誰とも目を合わせていない。彼女からすれば、存在が無い扱いなのだろう。 龍之介の視線に気付いて目をゆっくりと向ける。 「………何か、あるの?」 慌てて顔を下に向けて勢いよく首を横に振る龍之介、それを見て再び目線を校舎に戻す月夜。 龍之介は月夜と何でもいいから会話をしようと口をパクパクと動かすが、何を話せばいいのか思い浮かばない。 そうこうしているうちに、校舎に着いてしまった。
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