3人が本棚に入れています
本棚に追加
/26ページ
私が走っている背中で、爆音と共にまた一つ木が崩れ落ちる音がした。
それが私には、自分が走る事によって木が倒されていくように感じ不愉快極まりない。
なら止まればいいのだろうか、止まったらこの辺りに無限のように生える木々はその命を散らさなくて済むのだろうか。
………そういう訳ではない事はわかっている。
この山にある木々を全て殺してでも、私は逃げなくてはならない。
私が逃げなくちゃ、この木々だけではなくもっと多くの命を奪う手伝いをすることと同じになってしまう。
そんなのは…ごめんだ。
「………!」
そうこう考えている間にまた爆音が耳に響き、再び後ろで木が倒されていく。
足下に広がる植物も、目には見えないがこの山林を住処にしている昆虫達も、きっと驚いただろう。
そして平穏な生活をしていたのに私達という異端の存在が現れた事でそれを失い、あるいは命を失い、私達を恨むのだろう。
謝る事しかできない……ごめんね
深く、深く謝る。
最初のコメントを投稿しよう!